多くの買い物客で賑わうJRいわき駅前の複合商業ビルの中に、いわき総合図書館がある。「『個』のある図書館、『輪』をつくる図書館」をコンセプトにした都市型の駅前図書館として、2007年の開館以来、市民から愛されている。
福島県の東南端にあるいわき市は、1966年に5市4町5村の合併で誕生した。当時のいわき市は市として日本一の面積を有しており、広大な市域をカバーするため、1968年に登場したのが移動図書館「あづま号」だった。
以来、移動図書館は、地域の生活に深く浸透した。現在は、市北部を担当する5代目「いわき号」と、市南部を担当する3代目「しおかぜ」の2台が、毎月、市内116箇所のステーションを巡回している。どちらも、三菱ふそう キャンターをベースに移動図書館専用車両として改造したものだ。
秋晴れのこの日、「いわき号」の巡回を担当するのは、専任ドライバーの岡部英幸さんと、添乗スタッフの平山陽子さん。最初の目的地である三和小中学校に到着すると、2人は慣れた手つきで車両の外側にある書架扉を持ち上げ、黙々と準備を開始した。