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  • BEHIND THE SCENES

    イマジネーションを描く

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2022年のカレンダーを彩る美しい日本の季節。イラストレーターの相原健二さんに制作の舞台裏をうかがいます。

三菱ふそう2022年カレンダーに、素晴らしいイラストレーション作品を描き下ろしてくれた相原健二さん。ひとつひとつの作品に込められた思いや、イマジネーションを具現化する秘密などについて語っていただきました。

父が自動車修理工だったので、子供の頃から色んな自動車が身近な存在でした。工場が休みの日になると、工場にあるトラックの荷台に上がったりして遊んだものです。もちろんお客さんからお預かりしたトラックなんですけどね(笑)。

自分でもよく車を運転しますが、四季を通してお気に入りの道があります。厚木駅から自宅へ帰る道が緩やかな上り坂になっていて、橋にさしかかる手前でフロントガラス越しに丹沢の山並みがドーンと視界に飛び込んできます。大山がハワイのダイヤモンドヘッドみたいな形に見えて、とても雄大な風景です。

イラストレーターの視点  子供の頃から絵を描くのが好きで、武蔵野美術大学のデザイン学科を卒業しました。デザイン会社でプレゼンテーション用のスケッチなどを描いていましたが、30代前半でイラストレーターとして独立しました。

美大生の頃から、パース(遠近法)を意識して描く訓練をしてきました。でも同時に、それだけではつまらないと感じていました。イラストレーションには、さまざまな誇張や象徴化がつきもの。遠近法をあえて無視するのは、リアルからファンタジーに寄せることで、イメージが伝わりやすくなるからです。

ルールを破っていることは自覚しながら、見る人が違和感を覚えないように描くのも大切。第一印象で状況や世界観を伝えるのがイラストレーションという表現スタイルです。

リアルとファンタジーのギャップは、遠近法だけではありません。例えばソメイヨシノの花は、ほぼ真っ白な色をしています。でもイラストレーションでは白く描いてもすぐに桜だとわかってもらえないことがあり、ピンクに色付けをしてイメージを補ったりします。このように「期待されている色」を頭の中で想像しながら、イメージを構成していくのもイラストレーションの面白いところです。

アーティストのツール  最初のスケッチは、紙とペンで描き始めます。それを途中でデジタルデータとして取り込み、コンピューター上での作業に移ります。昔からやっているアナログのイメージで描き続けられるので、デジタルに移行しても違和感はありません。アナログとほぼ同じ体験で制作を進められます。

コンピューター上の制作で便利なのは、画面を拡大すればいくらでも細部が描き込めること。でもあまり精細に描きすぎて、印刷したら細部まで見えなかったりしたこともあります。

日本の美を表現  三菱ふそうのカレンダー用に描いた6点のイラストレーションは、どれも日本人におなじみの美しい風景をイマジネーションの中で再構成しています。

1・2月は、世界遺産でも有名な白川郷の雪景色をイメージしています。手前にはあたたかな灯りのような柿の木を入れました。

3・4月は、古都の枝垂れ桜をイメージしました。満開の桜の脇に、京都で見た坂道が伸びて、春爛漫の雰囲気を盛り上げています。

5・6月は、新茶の季節の茶畑です。富士山や青い海も見えるので、日本有数のお茶どころである静岡県を連想されることでしょう。

7・8月は、東京の夏を代表する隅田川の花火がモチーフ。色使いの変化によって近景と遠景の奥行きを出しています。

9・10月は、大きな中秋の名月が昇る都市を遠望したイメージ。高速道路を走るスーパーグレートに、スーパームーンの光が届きます。

11・12月は、eCanterのように未来的な都市風景です。実在する円形のインターチェンジをモチーフにしながら、ブルーの階調に細かな変化を加えました。

それぞれの作品では、季節感やロケーションをわかりやすく際立たせています。でも実は6枚の絵を横に並べてみると、道と道がつながって連続したひとつの風景にも見えてきます。遠くから眺めると、ある文字が浮かび上がってくる秘密の仕掛けもあります。

私のイラストレーション作品は、すべて自由なイマジネーションの産物です。実在する場所や季節ごとの風物詩をモチーフとしながらも、自分の頭の中でふくらんだ心象風景を表現しています。それぞれの美しい世界を走る車に思いを馳せながら描きました。