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    困難を打ち破って、夢を叶える力

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私の挑戦は、誰にも邪魔させない。

モニーク・キムラの話を聞いてまず驚くのは、彼女の大胆不敵な行動力だ。砕氷船が氷を砕きながら進むように、「とにかくやってみる」という強い意志で、次々と目の前に立ちはだかる壁を乗り越えてきた。

彼女にとって運転は生きがいだ――愛車の「スーパーグレート」にロケット部品を積み込んで、配送先のJAXAまで1,200キロを走行する時も、休日に日産シルビアのアクセルペダルを踏み込みドリフト走行を楽しむ時も。しかし、男性中心の世界で女性が能力を証明していくには度胸も努力も必要となる。彼女の戦いは今もなお続いているのだ。

エンジンをふかして 運転への興味はすでに幼少期に芽生えていた。世界的に有名な鈴鹿サーキットのある三重県で自動車整備士の一人娘だったモニークは、幼い頃から車やエンジンオイルに囲まれながら、限界に挑戦する文化の中で育った。

8歳になると父に連れられて祖父の農場に行き、父が整備した車の試運転に同乗した。父はここで愛娘に運転の面白さを教え、エンジンへの興味を育んでいった。

モニークが自分自身で情熱を見つけ出したのは10代の頃。年上の友人を通じてドリフト走行に出合った。週末に友人たちが彼女をスポーツクーペに乗せて猛スピードで走り回ると、彼女の想像力は次第に掻き立てられていく。

しかし、すぐに助手席では物足りなさを感じるようになる。「運転席に座ってみたい」。そう思った時には、すでに自らで運転することを心に決めていた。そして、18歳になるのを待って運転免許を取得すると、はじめての車を購入した。

車のオイルとアスファルトを愛するドリフト仲間と過ごす時間は、彼女をトラックの運転へと導いていく。大型車の運転は、彼女にとってあまりにも魅力的な挑戦だった。「プロのトラックドライバーと知り合い、授業料を払って運転技術を学び、大型自動車免許に無事合格したんです」

トラックの運転に対する彼女の熱意と行動力は周囲にも十分伝わった。だが、世間にはそうは思わない人もいて、彼女は思いがけず大きな壁にぶち当たることとなる。

最初の壁 ある時、友人が働いている運送会社を紹介してもらった。先方も乗り気で、応募書類を持って来て欲しいと言う。「でも、事務所を訪れた私を一目見て『本当にここで働きたいの?悪いけど、君ができる仕事はないよ』と言われたんです」と当時を振り返る。「経験不足を理由に断られたけど、そうではないことはわかっていました。未経験でも男性はドライバーとして採用されていましたから」

その後、何度も同じような経験を繰り返し、ついに彼女を採用する会社が現れた。その会社は、以前も彼女が面接に来たことを覚えていて、その粘り強さと確固たる意志がようやく受け入れられたのだ。「採用してくれる会社が見つかってよかったけれど、女性であることがこれほどまでに困難であるとは、信じられない気持ちでした」と彼女は言う。

操作は自由自在 多くのドライバーがそうであるように、大都市の混雑した道を走るのは好きじゃない。でも、28トンの大型トラックのハンドルを握り、険しい山道を走る自由な感覚は、彼女のモチベーションを高めてくれる。

「トラックドライバーの仕事の素晴らしさは、毎日が新しい

冒険であることですね」

 

「トラックドライバーの仕事の素晴らしさは、毎日が新しい冒険であることですね」と、モニークは言う。「配送の途中で毎回違う場所に立ち寄って、知らない人と出会い、毎回、新たな挑戦に向き合うんです」

仕事にはストレスもあり、相当な根性がなければ務まらない。長時間の運転だけでなく、膨大な事前準備も必要になる。慎重にルートを計画して時間通りに配送を完了させることはドライバーの責任であり、一切の例外は認められない。1つのミスが深刻な結果を招くこともあり、常に神経を研ぎ澄ませておく必要がある。しかし、一歩一歩階段を登るように挑戦を続けることは彼女の得意とすること。自分のスキルを高めるためのエクササイズのように取り組んでいる。

しかし、この仕事に就いて数年経った今も、実力を過小評価される場面に出くわすことがある。フォークリフトでトラックに荷物を積むことはドライバーの仕事のひとつ。彼女ももちろんフォークリフト免許を取得しているが、中には「自分がやる」と言って譲らない男性もいるそうだ。「正直、そんなことはもう気にならなくなりました」と、モニークは苦笑する。「やりたいなら、どうぞご勝手に。だって、その間は私は何もしなくてもお給料が貰えるんですから。どうぞ、どうぞって感じで」。負けん気の強そうなその笑顔を見ると、こちらまで顔がほころぶ。

もっとハングリーに 彼女が気概を見せるのは、本業だけではない。今、最も夢中になっているのは、日本各地で開催されるドリフト競技会で、優勝経験のあるトッププロを相手に対戦することだ。将来はプロのドリフターを目指している。「もちろんプロになるためには、スポンサーから声を掛けてもらう材料が必要です。でも、ドリフトをする度に新しいことを学び、自分のスキルやテクニックが上達する手応えを感じることができるんです。サーキットに入って、あぁしたい、こうしたいと自分に言い聞かせ、実際にそれが成功した時は、本当に最高の気分なんです」

現在は、普通運転免許や大型自動車免許、フォークリフト免許に加え、けん引免許の取得も目指している彼女。「さらに自分を追い込んで、もっと大きな車を動かしたいんです」と、満面の笑みを浮かべて夢を語る。長距離トラックドライバーの仕事に何の不満もないけれど、将来は自ら会社を立ち上げてドライバーを雇う側の立場に立ってみたい。「友人たちにいつも言っているんですが」と、最後にこんな言葉で話を締めくくった。「私の挑戦は、誰にも邪魔させません」

モニークの未来を邪魔することなんてできない。